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#89:堕天使(その8)

#89






まひるの眠った姿を確認すると、羽海野は注射器をバッグに仕舞って帰り支度を始めた。




「支払いはいつものようにしてくれって、留衣子さんに伝えておいてくれ」


「あ…、はい」




俺が返事をするのと同時に、羽海野はあどけない顔で眠っているまひるへと、再び視線を注いだ。




「まるで…天使みたいな寝顔だなぁ…」




羽海野の風貌からは似つかわしくない言葉が飛び出し、そのギャップからか、俺の耳にとても印象的な言葉として残った。


まひるのマンションで壊れた彼女を目にした時とは明らかに違う、いつものまひるがベッドの上にいた。




「じゃぁ、俺は帰るとするが、ごく稀に副作用が現れることがある。何かあった時には、ここに連絡してくれ」




羽海野はそう言うと、白衣のポケットから少し茶褐色がかった紙を取り出すと、俺に差し出した。


差し出された紙には、羽海野の名前と携帯電話の番号が走り書きされていた。


しかし、その紙はどれくらいの間、このポケットの中に放置されていたものなのだろう…


タバコのヤニで黄ばんでしまった紙は、心許ないほど傷んでいて、俺ですら一瞬、受け取るのに躊躇してしまうほどだった。




「まぁ、何かあったら留衣子さんに伝えてくれたらいいか。今までも、そうしてきたんだから…」




俺の一瞬の反応に気付いた羽海野は、苦笑しながら差し出した紙を手のひらに収める。


前にもそんなことがあったかのように、傷んだ紙は同じ形のままで羽海野の手の中に吸い込まれていった。




「…留衣子に連絡すればいいと分かってるのに…どうして俺にそれを渡そうと思ったんですか?」




特に気にしなければ何事もなく流れていく場面だったのだろうが羽海野の手に収まっていく黄ばんだ紙が気になってしまい、俺は思わず羽海野にそう問いかけていた。




「アンタなら、少しは信用出来る人間かと思ってな…」




羽海野はそう言うと、握った手をポケットの中に突っ込んだ。


マンションを訪れたばかりの羽海野の目は、俺を蔑んだように見ていたが、今はそう見てないことを確信して、俺は羽海野からその紙を受け取ったのだった。




羽海野が部屋を後にして、まひるの眠っているベッドルームへと戻った俺は、羽海野が言っていた天使のようなまひるの寝顔を見ながら、昂っていた気持ちがだんだんと落ち着いていくのを感じていた。


気が抜けたのか、俺は睡魔に負け、天使のようなまひるの寝顔の横で眠りに就いた。


そして、俺は見てしまった…


眠りから醒めた時、堕ちた天使が俺の目の前に舞い降りて来たのを…






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