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#87:堕天使(その6)

#87







「どうして、こんなことに…」




暫く黙っていた留衣子が、重たい口を開けて呟くように言った。


ベッドの上では、何もない空を、まるで何かがいるかのように戯れているまひるの姿があった。




「…コレだよ。この薬の大量摂取で、こんな風になったんじゃないかって」




「コレって…」




「そう…留衣子が俺にくれた物と同じだよね?」




俺の言葉に留衣子の体がピタリと動きを止めた。


俺の問い掛けた言葉に留衣子の肩が震えだし、笑い声が響き渡った。




「サトシ、あなたったら…何言い出すのかと思えば。こんな薬、今、どこででも手に入るわよ。飲み方さえ間違わなければ、危険な薬じゃないんだし…」




留衣子はひとしきり笑った後、俺の目を逸らすことなくそう言うと、壊れてしまったまひるに視線を移した。




「誰かに飲まされたか…飲み方を知らなかったか…まぁ、どちらにしても私の知り合いの医者を寄越すとするわ。庄野さんをこのままにしておく訳にはいかないものねぇ」




留衣子に上手く言いくるめられた感は拭えなかったが、あの薬の入手先が留衣子だという確信もない俺は、留衣子に従わざるを得なかった。




そして、留衣子が連絡を入れた2時間後に、羽海野と名乗る年配の医者がマンションを訪れた。


白衣を着ていなければ、医者などとは思えないほど、白髪交じりの髭を蓄えていて、お世辞にも小奇麗とは言えなかった。




「桜木留衣子さんから頼まれて来たんだが…」




インターホン越しの羽海野の声は、タバコの吸い過ぎなのか、喉が潰れているようで聞き取りづらい声をしていた。


オートロックを解除し、マンションの部屋のドアを開けると、羽海野は黙ったまま靴を脱ぎ捨て、ズカズカと部屋の中に上がり込んだ。




「今日は留衣子さんはおらんのか?」




「あ、1時間ほど前に会社に戻りました」




「相変わらず忙しいようだな。こういう呼び出しも、久しくなかったが…また、新しい玩具でも見つけたのかな」




そう言うと、俺の全身を舐めるように見てから、慣れた風にリビングへと向かっていった。


羽海野の目は、俺を憐れんでいるように見えて、内心いい気はしなかったが、今はとにかくまひるの状態を診てもらうことだけを考え、腹立たしさは腹の底に眠らせたのだった。






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