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#58:秘密(その19)

#58






サトシと私の傷だらけの体は、お互いを支え合うように暫くの間、抱き合った。


冷たくなった肌が触れ合って、次第に温かくなっていく。




「大丈夫だったか?」




サトシの言葉に瞼の奥の方が熱くなって、こめかみが痛くなった。


今までグッと堪えてきた涙が、一気に溢れそうになっていた。


私の泣きそうになる顔を見ながら、ハッと我に返ったサトシが、慌てて私を縛り付けるロープを外しだした。


サトシの手がロープに触れるたびに、体中に電流が走り抜けるような痛みが襲ってくる。




「…あっ…痛っ!」




必死でロープを外そうとしているサトシの焦りが、更にロープを私の肌に食い込ませて、思わず声が漏れてしまった。




「上條の奴…見よう見まねで縛ったりするから…」




サトシの口からそんな言葉が零れた後、部屋のどこから探し当てて来たのかは分からないが、目の前にはキラリと光る小型のナイフがあった。


サトシはナイフを使って、上條が私の体に巻きつけたロープを外そうと考えたのだろう。


しかし、サトシが考えていた以上にロープは肉に絡みついていて、ナイフをすべり込ませる程の隙間さえなかった。




「…お願い…します。早くこのロープを…解いて…」




ナイフを見てしまったからだろうか。


この痛みからやっと解放されると、頭の中にしっかりインプットされた想いが、我慢の限界を作り出し、懇願の声へと変えていた。


サトシは私の懇願の声に身震いすると、ロープを切る手を止めた。




「…サトシ…?…どうしたの?…早く…ロープを切って」




躊躇するサトシの姿を見て、痛みで耐え切れなくなった私は、震える声で息も絶え絶えに懇願を繰り返す。


その時…


サトシに灰皿を打ち付けられた上條の体が、短い呻き声と共にピクリと動いた。


上條の息遣いを感じて、私の体は恐怖で動けなくなった…


突然、動き出しそうな上條の蹲った体を見つめながら、私は息を潜める。




「出よう…」




私の耳元でサトシの囁く声が聞こえた。


足首に巻かれたロープだけをナイフで切って、サトシは震える私の体を起き上がらせた。


少しだけ自由になった体が、気持ちを急がせる…


この恐怖から少しでも早く解放されたいと、よろけそうになりながらも私の足はたどたどしく動き出した。


秘密の部屋から出た私に、サトシがスッポリと身を包んでくれるコートを掛けてくれた。




「まひる、行こう」




そう言って私の肩を抱いたまま、サトシが玄関の方へと向かった。


サトシに半歩遅れて歩く私は、思わず少しだけドアが開いた秘密の部屋を振り返る。


淫靡な匂いを身に纏ったままで、この部屋を後にすることに後ろ髪がひかれるのか…


置き去りにされた上條が気になるのか…


気持ちの整理など出来ないまま、私はサトシのマンションを後にしたのだった。






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