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#43:秘密(その4)

#43






「いったいどれだけ待たせれば気が済むの!」




ヒステリックに甲高い声をあげて、サトシの部屋の玄関に入って来たのは留衣子だった。


チャイムを鳴らしてドアが開くまでの数分間が、留衣子にとってはとても長く感じられたようだった。




「仕方ないだろ。シャワー浴びてたんだから。…それに、少し声のトーン落としてくれないかな…彼女、ぐっすり眠ってるんだ」




髪の毛から雫を垂らして、バスローブを無造作に羽織ったサトシは、いかにも今、バスルームから出てきたかのように装っている。


サトシの肩に手を添えて、10センチ以上はあるハイヒールを脱ぐ留衣子の手が止まった。




「…彼女、ここにいるの?」




「…あぁ…病院にはどうしても行きたくないって。家に送って欲しいと頼まれたんだけど、放っておけなくてさ。留衣子がくれる睡眠薬あったろ?アレ飲んだら、すぐに眠ちゃって…未だに目を覚まさないんだ」




サトシの言葉でハイヒールを慌てて脱いだ留衣子は、キングサイズのベッドが置かれている部屋へと急いで向かった。


ベッドが軋んで、私の横たわる枕元からいい匂いが漂ってくる。


留衣子がベッドに上がり、私が眠っているのかを確かめるように顔を近づけたのが気配で分かった。


心臓が口から出てしまいそうなほど、私の胸の鼓動は大きな音をたてる。


ドクンドクンと脈打つ鼓動が聴こえてしまうんじゃないかと思った時、サトシの声が留衣子の動作を止めた。




「大丈夫だよ、眠ってるだけだ。ちゃんと加減して飲ませたから」




サトシの言葉に留衣子がビクッと反応したのが、目を閉じた私にも伝わってきた。


再びベッドが揺れて、私から留衣子の気配が遠くなっていく。


留衣子がサトシのいる場所へと向かって歩いて行く足音だけが、私の耳に響いた。




「サトシ…何を言ってるの?アレはあくまでも睡眠薬よ。あなたの為に処方して貰ったのに、彼女に飲ませるなんて」




私が起きないように気遣いながらも、留衣子の声には怒りがこもっていた。


綺麗な留衣子の顔が、相当、歪んでいることを想像させる声だった。




「あれほど上條にも病院に行くように頼んでおいたのに、あなたも上條も使えないわね。…彼女が妊娠してるかどうか、確かめたかったのに…」




サトシの驚く声が耳に届く前に、愕然としたのは私だった。




「あの子が付き合ってた彼に相談受けてて。…結婚が決まったから自分の身辺、綺麗にしておきたいんじゃない?」




そう呟いた後、留衣子の唇から何かを啄むような音が聞こえてきた。


目を閉じていても、その音が何の音なのか想像がついて、私はギュッと目を閉じた。




「やめろって…彼女がいるのに」




「だって、あの薬、飲ませたんでしょ?だったら暫くは夢の中よ」




静かな部屋に留衣子の啄むようなキスの音が、嫌というほど耳に響いてきたのだった。






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