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#31:サトシ(その14)

#31






私の叫び声はサトシの唇で塞がれた。


差し込んでくる舌の荒々しさが、私に息つく暇も与えてくれなかった。


苦しくなって顔を背けようとしても、サトシはそれを許さずに、舌を更に奥の方へと差し込んでいった。


絡まる舌が音をたて、唾液が息も出来ない喉に流れ込んでいく。


私は思わず大きくむせ込み、サトシの唇から離れることが出来た。




「…大丈夫か?」




大きく体を揺らして咳き込んでいる私の背中に、サトシの手が添えられ、ゆっくりと上下する。


サトシの手の動きに合わせて、私は浅く呼吸を繰り返す。


いつの間にか、咳き込んでいた私の体は呼吸のリズムを取り戻し、少しずつ楽になっていった。




「…悪かったな。あんな酷いことして…」




サトシが私の背中に向かって、ポツリと呟いた。


上條の運転する車の中でのことを言っているのだと分かって、思わず「あの人は…」と言ってしまって口を噤んだ。


私に背中を向けたサトシの拳が、強く握り締められていたのを目にしたからだった。


上條がサトシにとってどういう存在なのか気にはなったが、サトシの背中が「聞くな」と拒否しているように見えて、私はそれ以上、言葉を発するのを止めた。


しかし、サトシの背中を見つめていると、さっきの恐怖感はいつの間にか消えていて、私の心に寂しさだけが残っていることに気付く。


私は無意識のうちに、サトシの動かない背中にそっと手を当てていた。




「…俺は、留衣子に拾われた。ピアニストになりたくて、金貯めて留学しようと思って、必死で働いてた。でも、貯めた金は知り合った奴に騙されて…」




「それが…まさか、あの人…?」




私の呟きにサトシの背中は反応したが、答えはくれなかった。


一息吐いて再び、サトシは自分のことを語りだした。


無一文になったサトシの目の前に留衣子が現れたこと…


夢だったピアニストになるチャンスが巡ってきたこと…


その為に留衣子に飼われることになったこと…


飼われて…


私はサトシの言葉を最後まで聞くことが出来ないまま、サトシの背中に覆い被さった。


見えないサトシの傷が見えるようで、傷口を塞いであげたい衝動に駆られていた。




「…同情してんの?」




サトシの冷ややかな言葉に、私はサトシの背中を抱きしめたまま首だけを横に振った。


その時は同情だったのかも知れない…


サトシの背中が寂しそうに見えたからかも知れない…


サトシに抱かれた時から…いや、その前から心のどこかに蠢く影を見ていたのかも知れない…


サトシが背中に覆い被さる私の方に向き直った。


サトシと目が合った瞬間、私の心がドクンと音をたてた。


引き寄せられるように唇を重ねた私をサトシは拒むことはせず、そのままベッドに埋もれていったのだった。






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