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#24:サトシ(その7)

#24






「お〜い、ジュン!ちょっと、こっち手伝って!」




カウンターの中から店長が童顔のバーテンダーの名前を呼んだ。


ジュンと呼ばれた彼は「はい!」と返事をすると、私の傍から離れていった。


入れ替わるようにサトシが戻ってきて、ピアノの置かれているステージへと上がった。


ポケットから鍵を取り出し、グランドピアノの鍵穴に差し込むとゆっくりと蓋を開けた。


キレイな長い指が音を確かめるように鍵盤を弾く。


静かな店内にサトシの奏でるピアノの音が小気味よく響き渡った。


うっとりとした顔で聴き入っていた私にサトシが声を掛けてきた。




「まひる、何の曲か知ってる?」




サトシにそう振られて私は思わず口ごもった。


音楽は嫌いではないが、得意分野でもない。


流行りの曲は耳にしても、ピアノで奏でるような曲は私の持つ知識には皆無だった。




「知らない?」




そうサトシに優しい声を掛けられると、首を縦に振るのが申し訳ないような気になってくる。




「じゃ、これから俺が教えてあげるよ」




鍵盤を叩く指を強めたサトシが、私にしか会話が聞こえないようにした気がして、私の体がゾクッと震えた。


と、同時に優しい笑みを浮かべるサトシが、何を考えているのか分からなくなって、ついつい裏の顔を探ってしまいたくなる衝動に駆られる。




「…桜木部長は…?」




そんな自分の衝動を押し殺そうと、私は話を逸らしたつもりだった。




「帰ったよ。…いや、会社に戻ったって言った方が正しいな。まひるのこと、くれぐれもよろしくって頼まれたし…あんた、留衣子に好かれてんだな」




サトシはそう言うと鍵盤を叩く指を止めた。


長くキレイな指が薄暗い照明に当たって、浮かび上がって見える。




「さ、出るぞ」




急に静まり返った部屋にサトシの声だけが響いた。


さっきまでの優しい声は消え、私の知っているサトシが顔を覗かせたような気がした。




「おい、ジュン!タクシー呼んで!」




サトシがカウンターに向かって童顔のバーテンダーに声を掛けると、「了解」とすぐに声が返って来た。




「あの…病院なら自分で行けますから。…一人で大丈夫です」




サトシの服の裾を引っ張りながら、私は小さな声で呟いた。




「何?警戒してる?…二人になったら、またあんなことするかも知れないって…」




サトシはジュンの姿を警戒しながら、囁くような声で耳打ちした。


私の背中にゾクゾクっと痺れるような感覚が走る。


サトシの手が私のお尻をそっと撫で上げたからだった。






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