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#97:堕天使(その16)

#97






俺はまひるの反応を見て、心穏やかではなかった。


気持ちを落ち着けようと、コーヒーを口に含むと、もう一度まひるの顔をチラッと見る。


まひるにも俺の戸惑いが伝わっているのか、何だか落ち着かない様子でマグカップの取手に触れては離す…を繰り返した。




「あの…」




静かな沈黙が続いて、俺がコーヒーを飲み干そうとする頃、堪らなくなったまひるがようやく口を開いた。




「何?」




「あなたは…私を知ってる…んでしょ?」




確信のないまま、俺に問い掛けるまひるの声は、僅かではあったが震えているのが俺にも伝わってきた。


きっと、俺がまひるの名前を呼び、俺の戸惑いがまひるにその言葉を言わせたのだろう。




「あぁ…知ってる」




俺はまひるが困惑することを承知で、そう答えていた・


まひるの記憶がどこまで欠落しているのかも、知りたいという気持ちがあったからだ。


案の定、まひるは俺の言葉に困惑した表情を浮かべる。


頭を捻りながら、何度も何度も俺の顔を見つめる。




「…覚えてない?」




俺の問い掛けに、まひるは申し訳なさそうな顔で小さく頷くと、突然、髪の毛をグチャグチャにし、頭を抱え込んだ。




「ごめんなさい…考えれば考えるほど、頭の奥の方が痛くなって…思い出せないの。どうしてだろ…」




顔を上げたまひるの顔が苦痛に歪んでいて、俺の胸がチクリと痛んだ。


俺は問い掛けてしまったことを後悔し、思わずまひるの細い肩に手を掛けた。




「いやっ!」




俺の手がまひるの肩に、ほんの一瞬触れただけで、まひるは嫌悪感を剥き出しにし、素早く俺の手から逃れる…


大袈裟なくらいの拒否反応に、俺の方が呆然とまひるを見つめてしまった。




「…こ、怖いの。触れられると…何だか、無性に怖くて…」




「まひる…」




「ごめんなさい!助けてくれたのに…怖いだなんて…ごめんなさい」




まひるは俺に謝りの言葉を発しながら、震える身体を自分の両手で押さえ込むように抱きしめた。




「どこまで…覚えてるの?…留衣子のことは…?」




「留衣子って…桜木部長のこと?…桜木部長を知ってるの?」




記憶にある名前が出たせいか、まひるは少し、俺への警戒心を解いたように見えた。


俺はまひるの問い掛けに答えないまま、続けざまに言葉を発する。




「川原…隆二は?」




その名前は覿面だった…


まひるは顔の色を失くし、留衣子の時とは違って、食いついてくるどころか、まるでその名前を避けるかのように俯いてしまった。




「知ってるよね?川原さん…」




「えぇ…私の恋人だった人だから」




まひるはそう言うと、ごく最近の記憶を辿り、思い出したように苦々しい顔を見せたのだった。






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