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#102:堕天使(その21)

#102






留衣子の大きな瞳が、戸惑う俺の姿を映した。


留衣子の口から放たれる言葉に身構えながら、俺は留衣子の目を見つめ返す。




「ねぇ、サトシ。ニューヨークに行ってみない?」




「…え?」




「私の知り合いがピアノを弾ける子を探してて…あなたのこと、話してはいたんだけど、私の決心がなかなかつかなかったものだから…」




「…留衣子の決心…って?」




「…あなたを手放す決心よ。本当なら、まだまだ愉しみたかったんだけれど」




留衣子はそう言うと、俺の首に両腕を回し、軽く唇を重ねてきた。




「サトシ…行ってくれるでしょ?私が涙を飲んで、そうするって決めたんだから」




留衣子はその言葉同様に、軽く押し付けていた唇を、今度は惜しむようにゆっくりと重ねる…


留衣子の唇の隙間から漏れる溜め息が、だんだんと深くなり、俺の唇は留衣子の唇に弄ばれるように吸い尽くされる。


俺の唇は、返事どころか息も出来ないくらいに、留衣子の唇と蠢く舌に塞がれた。




「留衣子…俺、やっぱり…」




留衣子の塞ぐ唇が隙間を作る瞬間を狙って、俺は息も絶え絶えにその言葉だけを発することが出来た。


しかし、その声が留衣子の耳には届かなかったのか、留衣子は更に執拗なくらい俺の唇を貪っている。




「…痛っ…」




留衣子の唇がようやく離れかけた時、俺の唇に強烈な痛みが走った。


…と、同時に唇の端から生温かいものが流れていった。




「…あなたも上條のようになりたいの?私を怒らせたら…ニューヨーク行きも失くなるわよ。サトシ…あなた、ピアノで食べていくのが夢だったんでしょ?こんないい話、断ったら…もうあなたが生きていく場所はないから」




唇の端から流れる生温かいものを自分の舌先で舐め上げ、それが血だと分かった時、俺は留衣子から逃げ出すことが出来ない事を確信した。


留衣子に逆らえば、俺自身…生きていく場所がないかも知れない。


そうなれば、まひるを守るどころか、まひるまで堕ちた生活を強いられるかも知れない。


どうせ、俺のことをまひるは覚えていない…


このまま俺がいなくなっても、まひるは今まで通りの生活に帰るだけだ…


だけど…


俺の頭の中を物凄いスピードで、いろんな想いが駆け巡っていく。


ただ、どんなに思いを巡らせても、人形のようにまひるを変えてしまったことの罪悪感だけが俺の中から消えようとはしなかった。






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